こんな本を読んだ!」カテゴリーアーカイブ

本を読むことはあまり得意じゃないのですが、頑張って読んでいます。
 
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【本】土井昭『9割の日本人が知らない 教科書から消えた世界史』

これはとても危険な本だ。なぜなら、「あなたはどう思いますか?」と著者が読者に問いかけながら、その前提となっている情報は陰謀論を含む一方的な側からの情報で、まったくもってフェアでない。読者を陰謀論に染める……という意図は著者にはないだろう。ただ、参考文献を見るかぎり、著者自身も陰謀論的な情報をかなり無批判に受け入れているように僕には見える。

単なる右派本、保守本というより、歴史解説の形式で、現在進行形の政治的フレーミングを知識として流し込んでくるところが危ない。ウクライナについてはロシア側の開戦正当化に近い構図が混じり、クルド人については地域トラブル、入管問題、PKK問題、民族史、SNSの流言がきちんと分離されないまま、一つの不穏な物語にまとめられている。

民間の読み物として売るなら、まだそういう本もあるだろう。しかし、これを公的な歴史解説本として配るのはかなり問題がある。歴史を勉強し、教えている人なのに、資料の質や言説のレイヤーの違いを区別できないというのは、どういうことなのだろう。知識はあるけれど教養がない、ということなのだろうか。

【本】大場渉、森薫、入江亜季『マンガの原理』

ここに書かれていること……方向性(表現を自分の頭で考え、こだわって描こう)自体は間違ってないが、個々の法則は全て筆者たちの主観のことで、一般的なことでない。
さらに読者傾向が変わりつつある昨今スマホで漫画を見る読者に対しては則さないオールドな法則が多い。
これを忠実に守らされる作家が可哀想だし、これからこれを愚直に守ろうとする新人漫画家は現場との違いで混乱するだろう。
漫画って何をやってもいいんだって言いたい。

【本】宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』

おもろかった!! タイトルからスポ根ものかと思ったらそうじゃなかった。 舞台となっている膳所(ぜぜ)は、大阪に住んでいる僕からしたらプレミアな場所で、京阪石山坂本線で浜大津を通って坂本から膳所、石山寺はちょっとした小旅行で、親にねだって何度も連れていってもらった。 さらに一〇年ぐらい前、「膳所の定食屋の親父が瞬間湯沸かし器みたいにすぐ怒るので怒らせに行こう」という実話誌の企画で、東京から泊まり込みで取材に行ったことを思い出す。こちらから何もしなくても領収書の書き方レベルで怒り出してビックリした!!

【本】筒井康隆『筒井康隆全集』10巻

『パプリカ』よりもずっと夢のリアルさを描いているし、発想や勢い、言葉遊びの面白さで筒井康隆小説の頂点。中学のとき初めて小説を書こうとしたとき、あまりに感銘を受けたこの小説を原稿用紙で書き写し精読、勉強した。なので僕の文章のリズムはここから始まっている。

【本】垣根涼介『極楽征夷大将軍』

弟の直義視点から足利尊氏の人生を描いた大作。あまりに物語世界に入り込みすぎて、今朝とうとう足利尊氏が登場する夢を見てしまった。史実はわからないが、キャラクターで歴史を読み解くとこんな現代的な切り口になるのか。興味深い。それにしても読みやすく、面白い内容にも関わらず、普段読み慣れない単語が多いと行ったり来たりで結構時間がかかる。毎日読み続けて二週間。ラスト二〇〇ページ、きりがないと思って一日で読もうとしたら四時間かかった。そのぐらい密度が高い。

【本】万城目学『八月の御所グラウンド』

このぐらいの現実と虚構のまじり具合でいいんだよ、小説ってこのぐらいがいちばん心地よい! 表題作、ロジックを練り込みすぎて今ひとつ入り込めなかった。最初の方の短編のほうが、キャラ描写含めて入りやすい。ただし表題作、京都の大学を二つ通い、祇園でバイトしていた自分としてはわかりみすぎる京都あるある。

【本】西連寺成子『啄木「ロ-マ字日記」を読む』

郷里に妻と子供を残して仕送りもせず給料を前借りして売春宿に泊まっている自分を責める石川啄木。で、女のあそこに指を一本ずつ入れたら五本全部入ってしまった。一〇〇年前の当たり前のことがわからないから、最低なのはわかるけれど、現代的視点で責めるのもどうかと思うが、まあ、本人が後悔するならそうとう最低のことなのだろう。でも、気持ちはわかる。

【本】ジョン・コナリー『失われたものたちの本』

今年読んだ小説で一番面白かった!! ラスト、滂沱の涙、涙、涙……母の死、父と継母、新しい兄弟との関係をうまく構築できない少年が異世界を旅して……これは宮崎駿氏の映画『君たちはどう生きるか』を思い起こさせるが、ギレルモ・デル・トロ監督の映画『パンズ・ラビリンス』とも重なる、こういう系譜の物語形式の一つ。人生と同じように苦く重い物語だが、キラリと輝く救いの光もあり。

【本】筒井康隆『筒井康隆全集〈9〉ビタミン.日本列島七曲り』

中学生のとき初めて読んだとき、「これはSFじゃない、全集で一番つまらない巻や」と思ったけれど、いま読んでみると派手なSF的ガジェット(宇宙人やロボットや超能力)こそ出ないけれど、現実世界の視点をずらすことであらわになる異世界は、凡庸なガジェットだけのSFよりよっぽどスリリングなSF!! 三〇年以上を経てお気に入りの一冊となりました。

【本】筒井康隆『筒井康隆全集〈8〉心狸学・社怪学.国境線は遠かった』

短編の技巧的にも、量的にも冴えに冴えている時期。週二〜三本書いていたのではないか。短編連作『心狸学・社怪学』は漫画雑誌で連載していたせいか一本一本が短い。短いのに印象深い作品が多い。『マス・コミュニケーション』(千人斬りの家系で二千人斬りを目論む男の話)は中一のとき読んだ衝撃が今でも蘇り、震える。

【本】星新一『できそこない博物館』

星新一は、一般的な小説の作り方をしない。化学や物理の実験のような、思考実験の過程が彼の物語のかたちだ。キャラクター描写や文学的な飛躍を好まない。エピソードにぶれは許されない。そこに文学的な(漫画的でもいいけど)揺らぎはない。逆に彼の書く物語に揺らぎがあったとするならその揺らぎこそがその小説内の実験対象だったりして、どちらにしろそのエピソードでなければならない高い精度で揺らぎを描く。情景描写や内面描写を削ぎ落とした、サプリメントより更に純度の高い、化学物質のような、それが星新一のショートショートなのだ。

【本】うささ『耳がきこえないママときこえるムスメのおはなし。』

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デッサン的な意味でなくこの漫画の世界観で成り立っている、不思議で個性的な、でも嫌味じゃなく、いい絵としかいいようがない、優しさや繊細さや何より愛情が詰まっている、素晴らしい表現としての絵。めっちゃ絵がうまいですやん! その絵が物語と複雑に結びついて、優しい気持ちにさせてくれる。僕は片耳難聴であと片目が見えなくて(あとADHDであと腎臓も生まれつきなくて)で、筆者の何百分の一だけど障害があって、でもそれさえポジティブに捉えさせてくれる…電車の中で読みながら何度も泣いてしまった、悲しさでなく優しさと嬉しさで。

【本】笹生那実『薔薇はシュラバで生まれる―70年代少女漫画アシスタント奮闘記―』

一九七〇年前後って僕が生まれる前のことだよ! そんな前のことよく覚えてるな〜って思ったけど、僕だって二〇歳前後のことは昨日のように覚えているから、そんなもんか。この場合の薔薇は薔薇族と関係のない、少女漫画特有の薔薇の背景効果由来なのか。僕も上京して三年ぐらい(二六〜二九歳)はここに描かれているような感じで泊まり込みで修羅場な仕事場に入ることがあった。けれど一番の修羅場は、自分の仕事が忙しくなってからの自分の仕事場(しかもそれが一〇年以上続いて身体を壊した)だった、というオチ。