これはとても危険な本だ。なぜなら、「あなたはどう思いますか?」と著者が読者に問いかけながら、その前提となっている情報は陰謀論を含む一方的な側からの情報で、まったくもってフェアでない。読者を陰謀論に染める……という意図は著者にはないだろう。ただ、参考文献を見るかぎり、著者自身も陰謀論的な情報をかなり無批判に受け入れているように僕には見える。
単なる右派本、保守本というより、歴史解説の形式で、現在進行形の政治的フレーミングを知識として流し込んでくるところが危ない。ウクライナについてはロシア側の開戦正当化に近い構図が混じり、クルド人については地域トラブル、入管問題、PKK問題、民族史、SNSの流言がきちんと分離されないまま、一つの不穏な物語にまとめられている。
民間の読み物として売るなら、まだそういう本もあるだろう。しかし、これを公的な歴史解説本として配るのはかなり問題がある。歴史を勉強し、教えている人なのに、資料の質や言説のレイヤーの違いを区別できないというのは、どういうことなのだろう。知識はあるけれど教養がない、ということなのだろうか。
